#47 Cutting Edge Blue (カッティングエッジ ブルー) 和訳 Chapter13「行動の背景」
[第一段落]
アリは、曲がりくねった道を歩いて砂浜の上を駆けています。
右に曲がったり、左に曲がったり、戻ったり、立ち止まったり、また前に進んだり。
アリが選んだ道の複雑さをどう説明すればよいのでしょうか。
アリの脳の中に、その複雑な行動を説明するための高度なプログラムを考えたとしても、うまくいかないことがわかるでしょう。
アリの脳を推測しようとして見落としていたのは、アリが生きている環境です。
風と波で形成された砂浜の構造や小さな丘や谷、そして障害物がアリの進路を形成しています。
見たところのアリの行動の複雑さは、アリの心というよりもむしろアリの環境の複雑さに影響しています。
アリは、砂の山や棒などの障害物を登るときにエネルギーを浪費することなく、できるだけ早く日の当たる場所から巣に戻るという単純なルールに従っているのかもしれません。
複雑な行動が複雑な精神的戦略を意味するわけではありません。
[第二段落]
一匹の孤立した空腹のネズミが、心理学者がT字迷路と呼ぶものの中を走ります。
ネズミは左にも右にも曲がります。
左に回れば10回のうち8回はエサを見つけることができ,右に回れば10回のうち2回しかエサを見つけることができません。
ネズミが見つけるエサの量は少ないので、何度も何度も迷路を走ります。
いろいろな実験の状況の中で、ネズミはほとんどの場合、予想通り左に曲がります。
しかし、時には悪い方の選択肢であるにもかかわらず、右に曲がることもあり、多くの研究者を悩ませています。
「最大化」と呼ばれる論理的な原則によれば、ネズミは常に左に曲がるはずです、なぜなら、そこでは80%の確率でエサを期待できるからです。
時々、ネズミは約80%の確率で左に曲がり、約20%の確率で右に曲がることがあります。
このような行動は、80/20パーセントの確率を反映しているため、確率マッチングと呼ばれます。
しかし、その結果、エサの量は少なくなります、期待値は68%しかありません。
ネズミの行動は非合理的のように見えます。
進化の過程でこの残念な動物の脳を誤った造りにしてしまったのでしょうか?
それとも、ネズミは単にバカなのでしょうか?
[第三段落]
ネズミの小さな脳ではなく、自然環境に目を向けることでネズミの行動を理解することができます。
自然な状態での採餌(エサをあさる行為)では、他の多くのネズミや動物とエサをめぐって競争します。
最も多くのエサがある場所に全員が行ったとしても、それぞれの取り分はわずかなものでしかありません。
時々、2番目にエサの量が多いところを選んでいたある突然変異の動物は、競争をすることが少なく、より多くの餌を得ることができるため、自然淘汰されます。
このように、ネズミは、競争的な環境で機能する戦略に依存しているようですが、個体を社会的に隔離しておくという実験状況には適していません。
[第四段落]
アリとネズミの話は、同じことを言っています。
行動を理解するためには、脳や心だけでなく、物理的、社会的な環境の構造にも目を向ける必要があります。
何か間違いがありましたら、コメントでご指摘していただけるとありがたいです。
次のチャプターの和訳です。